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(14)スタッフ募集と雇用

スタッフ採用のポイント
<目次>
1.採用計画
1−1.職種、資質、人数、給与、常勤かパートか
2.条件の明示
2−1.保険関係、給与、労働時間、有給休暇、初回の賞与、
    服務規律、労働法規の理解が必要、交通費
3.募集と面接
4.よくでる不満
4−1.前の職場と扱いが違う
4−2.103万円以内に抑えたい
4−3.入社前に聞いていた条件と違う
4−4.労働規則が守られていない
4−5.忙しいときに人を増やしてほしいと言われる
5.個人情報保護を遵守させる
6.性格テストの活用
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「スタッフ採用のポイント」
開業を成功させる条件は下記の3つと言われます。 3、信頼できるパートナー

スタッフはまさに信頼できるパートナーでなければなり
ません。開業を成功させるための重要な要素と言えます。

1.採用計画
診療所のスタッフの数としては、無床診療所の場合で、
通常は看護師1から3人、事務員1から3人、パート職員を
含めて総計2から6人で十分でしょう。診療所については
医療法上の職員標準数の定めはありません。

100人くらいの大きな事業所であれば、一人くらい休んでも
大きな支障はありませんが、4人前後の小さな事業所ですと、
同じ一人でも休んだときには全体に及ぼす影響は大きくなります。

また、診療所の雰囲気を作るのはスタッフの態度です。
そして、その雰囲気をリードするのは院長である先生です。

勤務医時代は労務管理に気を使う必要はほとんどなかったと
思いますが、診療所を開くとなると労務管理の責任はすべて
院長先生にかかってきます。

来院が予想される患者の数から職種ごとに必要な人員を決めます。
当然、診療科と規模によって薬剤師、放射線技師、栄養士、
調理師、介護職等の有無と人数が変わってきます。

自院の強みとしたいところに要員を重点的に配置します。
たとえば、受付での応対のレベルを高くして接遇面を強化
したい場合は、パートの事務職員はいれずに正社員のみに
する、1人余分に入れて人員に余裕を持たせる等の対策が
考えられます。

以上のように自院の戦略を考慮しながら採用計画を作ります。

1−1.職種、資質、人数、給与、常勤かパートか
採用計画を作成するに当たり検討すべき項目は職種、資質、
人数、給与、常勤かパートかなどです。

採用計画が決まると採用活動に入ります。

業者との打ち合わせ
↓(2週間)
募集広告
↓(2週間)
書類選考
↓(1週間)
面接
↓(1週間)
採用通知
↓(1週間)
模擬診療

トレーニング

募集を決めてから採用決定まで6週間程度かかります。
診療所のオープン日の2ヶ月前には採用計画を立てて
おく必要があります。

2.条件の明示
募集に当たっては労働条件を明示する必要があります。

法律で書面交付が義務付けられているのは、次の5項目です。

(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所および業務に関する事項
(3)始業および就業の時刻、所定労働時間を越える労働の有無、
   休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて
   就業させる場合における就業時転換に関する事項
(4)賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切、支払い
   の時期、昇給に関する事項
(5)退職に関する事項

また、就業規則の届出義務があるのは労働者が10人以上の
場合であるが、最初から就業規則を作成しておくことを
お勧めします。

そのメリットは、次の3つです。

1、労働者にとってはルールがはっきりすることで安心して働ける。
2、使用者側もルールが明確なのでその都度判断に迷う必要がない。
3、その結果、良好な労使関係を築きやすい。

2−1.保険関係、給与、労働時間、有給休暇、初回の賞与、
    服務規律、労働法規の理解が必要、交通費
就業規則に明記すべき事項は、保険関係、給与、交通費等の手当て、
労働時間、有給休暇、初回の賞与、服務規律等です。

就業規則のモデルは各都道府県の各保険医協会なども出していま
すのでそれらを参考に作ればいいでしょう。

また、労働条件の通知は「労働条件通知書」の形で文書で交付した
ほうが望ましいと言えます。働くほうも安心して働けますし、
労使の信頼を醸成するのにも役立ちます。

3.募集と面接
いよいよ募集です。
募集には媒体ごとの特性を良く理解して費用対効果の高いものを
選びたいものです。

無料で手軽なのは公共職業安定所(ハローワーク)ですが、
看護師などの専門職の採用は難しいと言えます。

次に、求人誌と新聞広告ですが、これは費用が高くなります。

次に折り込みチラシがあります。これは費用が一番かかりますが、
開業前の宣伝を兼ねて配布すれば効率はいいと言えます。

看護師の募集には各都道府県の看護協会が運営するナースセンター
が実施する無料のナースバンクも利用できます。短期間に多くの
看護師を募集するのは難しいようです。

看護学校、専門学校に募集をかける方法もありますが、開業時
の人材募集としては即戦力にはならないので利用はあまり
勧められません。

縁故募集について考えてみましょう。勤務先の看護師や技師を
引き抜く場合は、一緒に仕事をしているので期待通りの働きを
してもらえる可能性が高いと言えます。しかし、知り合いの
紹介の場合は注意が必要です。

その知り合いとは馬があっていい関係があったとしても院長先生
ともうまく行くとは限りません。また、上司や有力者の紹介と
なると問題が起きても辞めさせにくい、給料が高くなるなどの
リスクもあることを考慮に入れて慎重に検討する必要があります。

次は選考と面接です。
選考は書類選考、筆記試験、面接と言う流れになります。
書類選考では履歴書と職務経歴書等の応募書類だけで条件に合う人
を大まかに選びます。

書類選考のポイントは経歴です。短期間で職場を変えている場合は
要注意です。また、誤字脱字が多いのも注意が必要です。

次に、筆記試験では一般教養、性格診断テスト、小論文のうち自院
にあったものを選びます。看護師などの資格者には一般教養は必要
ありません。事務職などの場合はやはり必要です。

小論文では客観的な評価は困難ですが、自院の経営理念に合うか
どうかを判定するのには使えます。

性格診断テストは短い時間で効果的な診断がでやすいと言えます。

面接に当たってはあらかじめ評価項目と質問事項を決めて評価
シートにしておきます。

評価項目には、書類では分からない容姿、態度、表情、服装の
センス、言葉遣いをいれます。質問事項には、人生観、仕事観、
世界観などの価値観が分かるような質問を用意して、こんな考えの
持ち主なら一緒にやっていけるという感触をつかむことが大切です。

面接の時には院長先生が応募者をテストするのと同じように、
応募者も院長先生をテストしています。ですから、医院の
経営理念と運営方針を応募者にしっかりと伝えることも大切です。

待遇面の条件については内定してから労働条件通知書ではっきりと
示して納得してもらうことが必要です。文書にして交わしておか
ないと、言った言わないで後々もめる原因になります。

最後に、健康診断は必ず受けてもらいましょう。

4.よくでる不満
診療所では患者さんと一番長く話をするのはお医者さんですが、
一番長く時間を過ごすのは待合室です。従って、待合室での印象が
診療所のサービスの質の大きな決定要因であると考えられます。

基本的に診療サービスの価格はどこの診療所でもほぼ同じです。
従って、差別化を図るためにはサービスの質の向上が必要です。

待合室では、受付のスタッフと呼び出しにきた看護師さんの
態度がよくわかります。

従って、診療所の待合室にいる間に患者さんはスタッフの動作や
言葉遣いを無意識の内に観察しています。

診療所のスタッフを強制的に働かせることはできません。態度
とは本人の意識から発するものです。

すなわち、スタッフの態度を変えるためにはその意識を変える
必要があると言うことになります。

ではスタッフの意識を変えるためには何が必要でしょうか。
あるいは、スタッフの意識を良好に保つためには何が必要
でしょうか。

それはスタッフの不満を解消することと経営理念を理解して
もらうことです。

まずよくでる不満には次のようなものがあります。
1、前の職場と扱いが違う
2、103万円以内に抑えたい
3、入社前に聞いていた条件と違う
4、労働規則が守られていない
5、忙しいときに人を増やしてほしいと言われる

4−1.前の職場と扱いが違う
まず、前の職場と扱いが違うという不満について考えてみま
しょう。

職場が変われば環境も待遇も異なるというのは自明のことで
あり、それは誰でも知っていることです。それにもかかわらず
不満がでるということは、コミュニケーションが不足している
ということです。

すなわち、事前に当診療所ではこんな考え方でやっていきます。
また、こんな方針で仕事を進めていきますということが十分に
伝わっていなかったことが不満の原因と考えられます。

不満とは期待と現実とのギャップです。

現実を思うように変えることはできません。しかし、期待
すなわち本人の思い込みは事前に適切な説明を行うことに
よって回避できます。すなわち、コミュニケーション不足が
不満の原因というわけです。

4−2.103万円以内に抑えたい
次に、年収を103万円以内に抑えたいという不満です。
しかし、これは実は不満ではありません。希望です。
ご主人の扶養家族になっている場合、年収が103万円を超えると
所得税がかかったうえに配偶者控除を受けられなくなります。
また、ご主人が会社で家族手当をもらっている場合などはそれさえ
も支給されない場合があるので、収入を103万円以下に抑えたい
ということです。勤務時間を調整して希望をかなえてあげましょう。

4−3.入社前に聞いていた条件と違う
次は、入社前に聞いていた条件と違うという不満です。
しかし、これも実はコミュニケーション不足です。

入社前の説明が不足していたか、説明したけれども本人が聞き逃
したかのどちらかです。その対策としては、前々回の10号でも
述べたように労働条件を「労働条件通知書」という文書ではっきりと
通知しておくことと口頭で念を押すことで防止することができます。

4−4.労働規則が守られていない
次は、労働規則が守られていないという不満です。これはもう不満
の域を超えて法律違反の問題です。

最近は、労働基準監督署の指導はかなり厳しくなって来ているよう
です。また、働く人の意識も大きく変わり権利はしっかりと主張
するようになって来ています。ここで、原点に帰って考えてみる
必要がありそうです。

もし法律違反を犯しているならば、労働基準監督署に告発されたら
是正しなければなりません。そのときには過去2年間に遡って割増
賃金を支払わなければいけないなどということになります。

そうすると、賃金を計算しなおすだけでもたいへんな労力と
エネルギーが必要になります。そのうえ、労働基準監督署の
職員と折衝したり本人に確認したりと非常に手間がかかります。

非常な手間をかけて払うものを払ったとしても、スタッフの士気の
低下はまぬかれません。一度失った信頼を取り戻すのにはこれまた
長い時間がかかります。

結局、法律違反は高くつくのです。

もし、労働規則が守られていないという不満が出たら、すぐに誠実に
対処してスタッフの信頼を維持することが大切です。

4−5.忙しいときに人を増やしてほしいと言われる
次に、忙しいときに人を増やしてほしいと言われるという不満です。
これは重要な経営判断です。
正社員一人を雇うことは3000万円の投資と考えましょう。まず、
忙しさの原因を分析する必要があります。忙しさが一時的なものだと
判断されるなら正社員を入れてはいけません。

残業をお願いするか短期のアルバイトを雇うか派遣労働者を入れるか
を考えます。
その場合は当然スタッフにもその旨を伝え理解を得ることが重要です。
「忙しいのはこの時期だけだから申し訳ないが残業してください」と
いうように。

5.個人情報保護を遵守させる
個人情報の遵守については、前回の11号で詳しく述べましたので
今回は省略いたしますが、絶対にすぐ実行しておくことはすべての
スタッフと「秘密保持契約を結んでおく」ことです。

6.性格テストの活用
では、いよいよ「スタッフの採用のポイント」の最後の項目「性格
テストの活用」です。

性格テストに関しては少し費用がかかりますがぜひ検討していただき
たいものです。たとえば、極端に組織になじみにくい人の判別や応募
者が多いときの選別などには役に立ちます。一人3000円前後で
実施できます。

以上はスタッフの不満を解消することを述べてきました。

しかし、それだけでは十分ではありません。
スタッフの不満を解消することは大切ですが、それ以上に大切な
ことは経営理念を浸透させることです。

こんなたとえ話があります。
ある人がつかれた顔でレンガを積んでいました。通りがかった人が
その人に「何をしているんだい」とたずねました。

すると、そのレンガ積みの職人は答えました。
「見てわかるようにレンガを積んでいるのさ」

今度は生き生きと働いている別のレンガ積みの職人に同じことを
聞きました。

すると、その職人はこう答えたのです。
「皆がお祈りできる立派な教会を建てているんだよ」

この話でわかることは人間には大きな使命を理解する能力がある
と言うことです。

そして、その大きな使命を理解したとき人間はとても大きな力を
発揮すると言うことです。

診療所の経営理念を全員に浸透させましょう。